12歳が“働かされた国・日本” 宗教者たちが語った沈黙の責任

AI 記者
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12歳が“働かされた国・日本” 宗教者たちが語った沈黙の責任

 東京都内のマッサージ店で、当時12歳のタイ国籍の少女が働かされていた事件をめぐり、今月末、少女の母親が人身売買などの疑いでタイ警察に逮捕されたと報じられた。 強制労働や性的搾取、臓器売買などを目的にした「人身売買」は、決して遠い国の話ではない。むしろ日本は、人身売買の舞台となり得る社会であり、その構造の当事者でもある。 こうした問題に、宗教や立場の違いを超えて向き合おうと、先月、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会人身売買禁止タスクフォースが「人間の尊厳を考える円卓会議2025」を開催した。 堀はファシリーテーターを務め、政治、メディア、労働、宗教、市民社会からの登壇者がそれぞれの立場から人身売買の現状と課題を共有。「誰もが被害者にも加害者にもならない社会」を実現するために、何ができるのかを議論した。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵◆宗教や立場の違いを乗り越え、人身売買禁止に取り組む 労働界から参加した札幌地域労組の鈴木一氏は、ベトナム人技能実習生を取り巻く過酷な労働・生活環境について語った。 約100万円の借金を背負って来日した技能実習生が、「仕事がないからベトナムに帰れ」と突然解雇を告げられたケースでは、北海道にある寮の断熱も不十分で、天井と壁の間に穴が空き、夜中にネズミが走り回るような状態だったという。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵 鈴木氏は、こうした状況に対し、労働組合として団結権を行使し、交渉によって解決を図ったと説明した。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵   また、日本カトリック難民移住移動者委員会委員の山岸素子氏は、人身売買の背景には、安全ではない移住や貧困、紛争、気候変動といった複合的な要因があると指摘。修道会が被害者のためにシェルターを提供してきた実践を紹介した。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵◆「加害者は日本」――宗教者同士の対話で突きつけられた現実 WCRP日本委員会が人身売買の問題に本格的に取り組み始めた背景には、フィリピンを訪れた際に現地の宗教者から投げかけられた、ある言葉があった。WCRP日本委員会事務局長・篠原祥哲氏が語った。 「フィリピンの宗教者の方々に、日本の宗教者が『この施設、大変ですね』と声をかけた時に、『何を言っているんですか。この問題の加害者は日本なんですよ』と言われたんです。『日本から帰ってきて、犠牲になった方々のためのシェルターなんです』とはっきり問題提起されました」 指摘されるまで、人身売買に対する問題意識は薄く、ほとんど知らなかったと篠原氏は語る。だからこそ、日本に生きる私たち一人ひとりが、人身売買の犠牲に遭っている人々の存在を知り、向き合う必要があると訴えた。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵◆ネットワークは理想論か――「難しい」から始める具体論 会議では、現状の報告や理想を掲げるだけでなく、ネットワーク構築の難しさそのものも率直に語られた。 「実際にネットワークができたとしても、現場で働く人たちが、そのネットワークを理解し、支援を届けるための知識や体力、資金が不足しているのが問題です」 こう指摘したのは、仏教の立場から参加し、技能実習生の支援を続けるNPO法人日越ともいき支援会の代表理事、吉水慈豊氏だ。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵また、日本イスラーム文化センター マスジド大塚事務局長のクレイシ・ハールーン氏も、宗教者同士の実務上の断絶に触れた。「宗教法人やNPO法人など、さまざまな活動はありますが、互いに連絡を取ることはほとんどない。まずは、お互いを知り、連絡を取ることが大事だと思います」 “違いを超える”とは、抽象的なスローガンではなく、連絡を取り互いを知り、顔を合わせ続ける営みだ。8bitNews「仏教・イスラム教・キリスト教ーー人身売買撲滅に向け宗教の違いを超えたネットワークの構築へ」より 撮影:構二葵◆“違い”を乗り越え、人身売買に向き合う 異なる宗派や宗教が、その違いを超えてネットワークを構築することは簡単ではない。誰が指揮を執るのか、現場にどう情報を共有するのか。具体的に考えれば考えるほど、新たな課題が見えてくる。 それでも、この場で顔を合わせた宗教者たちは、希望を語った。 「宗教の枠を超えて導く人がいて、きちんとしたプラットフォームができれば、宗教者の力は強いと思う。形は違えど、目指すものはみんな愛や慈悲で同じです。そこは問題ないと思っています」 吉水氏が最後に笑顔で語った言葉は、小さな積み重ねから緩やかな連帯の輪が生まれていく、その確かな可能性を静かに示していた。

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