【現代社会の地獄絵図】お掃除ロボット「ルンバ」アイロボット社を襲った悲劇 「未来の害悪」を優先して「現実の経済的危機」を無視した国家介入が招いた“最悪の事態”

AI 記者
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【現代社会の地獄絵図】お掃除ロボット「ルンバ」アイロボット社を襲った悲劇 「未来の害悪」を優先して「現実の経済的危機」を無視した国家介入が招いた“最悪の事態”

「ルンバ」を生んだアイロボットを襲った悲劇とは(Getty Images) お掃除ロボットの代名詞と言われた「ルンバ」を開発する米アイロボット社が、12月14日に米連邦破産法第11条の適用を申請、事実上の経営破綻となり、中国企業に買収されることになった。「一連の出来事から浮かび上がるのは、単なる企業の失敗談ではない」というのは、イトモス研究所所長・小倉健一氏だ。その背景に何があったのか。小倉氏が解き明かす。 【写真】ロボット掃除機「ルンバ」を生み出した、コリン・アングル氏 * * *  低い駆動音を響かせながら、部屋の隅々まで埃を探して回る。壁にぶつかれば方向を変え、掃除が終われば元の位置に帰っていく。このマシーンは何かと聞かれれば、多くの人は「ルンバ」と答えるのではないだろうか。しかし、現在稼働している多くの場合、その製品名は「ルンバ」ではなく、中国製の何か違う名前のマシーンだったりする。  米アイロボット社が送り出した「ルンバ」は、単なる家電製品の枠を超え、現代の家庭におけるある種の“ペット”のような地位を確立した。しかし、2025年12月15日、この自律型掃除機の生みの親であるアイロボット社は、連邦破産法第11条の適用を申請した。事実上の経営破綻である。  アイロボット社は今後、製造委託先であった中国企業、ピセア・ロボティクスの傘下に入るという。かつては35億ドル以上の価値を誇った企業が、今やその25分の1ほどの評価額で身売りされる結末を迎えた。なぜ、世界中で愛されたパイオニアは、このような末路を辿ることになったのか。一連の出来事から浮かび上がるのは、単なる企業の失敗談ではない。そこには、国家による介入が複雑に絡み合い、最悪の結果を招いた“現代社会の地獄絵図”がある。立ちはだかったのが「規制」という名の壁 事の発端は、2022年に遡る。米アマゾン・ドット・コムが、アイロボット社を約17億ドルで買収すると発表したことだ。当時、アイロボット社はすでに苦境に立たされていた。安価な中国製品の台頭により、収益構造が悪化していたからだ。アマゾンという巨大な資本の下で再起を図ることは、誰の目にも合理的な選択に映った。  しかし、ここで立ちはだかったのが「規制」という名の壁である。欧州連合(EU)の規制当局や米連邦取引委員会(FTC)は、この買収が競争を阻害する恐れがあるとして、強硬に反対した。巨大IT企業が市場を支配することを懸念したわけだ。結果、2024年初頭に買収計画は白紙撤回された。  ここから、アイロボット社の転落は加速する。『IEEE Spectrum』(12月16日付配信)に掲載されたインタビュー記事において、共同創業者であるコリン・アングル氏は、事態を「悲劇」と表現している。アングル氏によれば、規制当局は「仮定の話としての未来の害悪」を優先し、「現実の経済的危機」を無視したという。当局は、アマゾンがルンバを使って市場を独占する未来を恐れたが、現実にはアイロボット社単体では生き残れないほど市場環境は厳しかった。  アングル氏はインタビューの中で、規制当局が技術系企業の買収を阻止することの危険性を強く訴えている。スタートアップ企業が革新的な技術を開発し、大企業が買収することで、技術は社会に広く普及する。これがシリコンバレーをはじめとするイノベーション経済の基本的なサイクルだ。しかし、当局は大企業への敵対心を優先し、サイクルを断ち切ってしまった。「我々は、より大きなアジェンダ(政治的意図)の下敷きになって轢き殺されたのだ」という創業者の言葉は、重く響く。  さらに追い打ちをかけたのが、関税である。米国政府がベトナムや中国からの輸入品に課した高関税が、アイロボット社のコストを劇的に増大させた。製造拠点を海外に持つ同社にとって、46%にも及ぶ関税は致命傷となった。トランプ政権が掲げる「国内産業の保護」という美名の下で行われた保護貿易政策が、皮肉にも米国を代表するロボット企業を窒息させたのである。

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